「人事カンファレンス2025」第1部レポート

2025年10月16日、沖縄産業支援センターにて、ワダチラボ主催の「人事カンファレンス2025」を開催いたしました。本カンファレンスは、ワダチラボ代表・福島の「人事担当者が学び、つながり、称え合える場を作りたい」という長年の想いが実現したもの。初回となる今回は「人事の力で組織の未来を変える」をテーマに、第1部で基調公演を、第2部ではクライアント企業の皆様による成果発表を実施しました。まずは第1部から振り返りましょう!

第1部 基調講演(榎本あつし先生)

これからの時代、人事こそが最重要の事業戦略

 第1部の基調講演では、株式会社MillReef代表取締役であり、社会保険労務士の榎本あつしさんが登壇しました。榎本さんは人事制度設計、評価制度運用の分野で多くの企業を支援する労務のスペシャリスト。ワダチラボのコンサルティングでも、榎本さんの著書『A4一枚評価制度』を活用しています。

 この日の基調講演のタイトルは「人事評価の効果的な仕組みと運用」。榎本さんは最初に「これからの時代、人事こそが最重要の事業戦略です」と前置きした上で、「人事評価制度は、会社に新しいOSをインストールするようなもの。一つの制度にとどまらず、組織全体に波及効果をもたらすプラットフォームなんです」と言い、基調講演をスタートしました。

「評価を回すこと」が目的になっていませんか?

 榎本さんが長年の経験の中で感じているのは、「制度そのもの」が目的化してしまう企業が多いこと。業績アップや人材育成、組織の方向性を揃えるなど、評価制度を導入する目的は企業によってさまざまですが、運用するにつれ「制度を回すこと」自体がゴールになってしまうケースが少なくないと言うのです。「制度を導入して終わりでは意味がありません。大切なのは“何のためにやるのか”という目的です」。
 では「目的」はどう設計するのでしょうか。榎本さんはまず、目的となりうる人事評価制度導入のメリットを、次の5つに整理して紹介します。

  1. 適正な処遇 
  2. 人材育成 
  3. 共通のベクトルづくり 
  4. 動機づけ 
  5. 組織目標の達成

中でも、榎本さんが重視するのは②の「人材育成」です。
 「評価シートはその人への“期待”を示すもの。そして半年後に答え合わせし、最後に“次は何をどう伸ばすか”を確認し合うものです。そのサイクルによって評価が人材育成につながるんです」。

 また、目的を設計した後の評価シートの使い方にも注目。榎本さんいわく、評価シートの力の入れどころを間違えている企業が多く、その多くは目標設定10%、期間中0%、評価実施に90%のパワーバランスになっているとか。榎本さんが思う理想は、それぞれ30%、50%、20%です。「成果は行動の集積でしかない。期間中にいかに確認し、頑張りを褒め、やってなかったらお尻を叩き、一緒に考えて記録を残すかが大事」と話しました。

評価をする時に大事にしたいこと

 榎本さんは、評価する際に見る3大要素(成果・スキル・姿勢)についても言及します。
「どの要素を重視するかは、会社や現在のステージによって変わってきます。まずは今の会社の風土や、ステージを見つめながら作っていくことが重要」とした上で、自身の著書でも取り上げていた「A4一枚評価シート」を紹介。

気になる方はぜひ、榎本さんの著書『人事評価で業績を上げる!「A4一枚評価制度」』を手に取ってみてください!

 A4一枚評価シートとは、文字通りA4一枚に評価項目と考課測定欄を収めた評価シート
「なぜA4一枚にまとめるかというと、会社と組織の目標をいつでも見られる状態にして欲しいから。自分事にして欲しいからです」。使い方の工夫として、榎本さんはあえて評価シートに合計点を入れないそう。なぜなら合計点を決めることで、全体のバランスを考慮した調整が入るから。本来の成果に対する純粋な数字が付けられなくなるのです。
 また、評価は給与や賞与と連動せずに切り分けるとうまくいくとのアドバイスも。「成果にはラッキーパンチもある。どうしても報酬に還元したい場合は、その期で完結させる一時金や、ポイント制にするのがおすすめです」と話しました。他にも、評価に報酬を連動させることで、思わぬデメリットもあると榎本さん。それは「人参ぶら下げ型のモチベーション」になってしまうこと。やる気を引き出すための褒美が、結果としてやりがいを奪ってしまうこともあると榎本さんは指摘します。

 「子どもに『お小遣いをあげるから勉強しなさい』と言うのと似ていますね。本来は“勉強したら成績が上がった。お手伝いをしたら褒めてもらえた。だから自分はまたやるんだ”が理想です。仕事も同じで、やったことがいかに成長に繋がり、会社に認められるか。つまり動機付けが大事なんです。人事の皆さんには、この動機づけにしっかり取り組んで欲しいんです」と熱く語りました。

人を動かすのは、承認と成長の実感

 榎本さんは「動機付け」の重要性を、心理学者フレデリック・ハーズバーグの「衛生要因」と「動機づけ要因」に紐づけて語ります。労働時間や給与などの衛生要因は「欠けると不満につながるけれど、これが原因で辞める人はあまりいない」と明言。一方で、承認や成長、達成感といった動機づけ要因がうまくいかないと、優秀な人から辞めてしまうのだとか。「この会社は将来性があって、ここにいたら自分が成長できるなと実感できていれば、多少愚痴を言っても辞めません。衛生要因ばかりに目を向けると『不満が出ないようにしよう』が人事評価の目的になり、これが形骸化が進む一歩となります」と、動機づけ要因を強化する重要性を語りました。

組織を変えるのは、 制度ではなく「人」

 最後に榎本さんは、改めてこう話します。
「制度を整えることは大切ですが、最終的に組織を動かすのは“人”です。社員一人ひとりの行動が変わらなければ、組織は変わりません。適正な処遇で人を定着させ、成長を促し、同じ方向に向かうチームをつくる。その結果として、企業の目標が達成されていくことが大事。その土台をつくるのが人事の役割だと思います」と笑顔で締めくくりました。