
「相談できる人がいない」孤独に、決断を迫られる経営者の悩み
「店舗展開なんかしない方が良かったんじゃないか」
2012年に創業し、今年で12年目を迎えるいまいパン。メディアに取り上げられることも多く、2018年には2店舗目となる古島店がオープンしており、外から見ると順風満帆に見えます。
ですが実は、オーナーの今井さんには数年前より大きな不安があったのだとか。
「古島店をオープンしてから数年で人の流れが悪くなり、それによって店舗の人間関係もどんどん悪くなっていきました。店舗展開なんてしない方が良かったんじゃないかという思考になっていたところ、さらに新型コロナウイルスが流行し始めたんです。先が見えない不安で余裕がなくなり、スタッフに対してもっとこうして欲しい、なんでできないんだと苛立ちばかりが募るようになりました。今思えば、仕組み作りができておらず働きやすくもない職場を強引に回そうとしていた自分自身に苛立っていたのだろうなと思いますが、当時はそう考えることができなかったんです」。
不安を感じながらも、誰にも相談できなかったと言う今井さんは、社内に相談できる人もおらず、だけどそうしてしまったのは自分だと自責の念にも駆られ、孤独を感じていましたが、どうにか雰囲気を変えようと研修や社員との個人面談(1on1)を取り入れることにしました。
そこでワダチラボに声をかけてくださったのです。「実はリムさんとは18年前に出会っていました。僕がマレーシアでパン屋の立ち上げに携わっていた時、彼女は同国の日本料理屋でホールスタッフをしていたんです。 10年前沖縄で再会して、フェイスブックでちょこちょこ近況をチェックするようになり、そういえばコーチングをしてるって書いてたなと思い出して。話を聞いてみることにしたんです」。
「メンタリング」を通して人の話を聞ける自分になりたい
リムと会う約束を交わしたものの、実は不安もあったという今井さん。
「連絡してみたものの、正直なところホールスタッフのイメージしかありませんでしたし、外部の人を入れることで現場が悪化してしまう不安もあったので、話を聞いてピンとこなかったら断ろうと思っていました」とのこと。
そして約束の当日。まず今井さんは、久しぶりに会ったリムのポジティブさに驚いたそうです。
「自分がネガティブなので、こんな人がいるんだと驚きました。だけどこういう人間味があってポジティブな人との関わりが必要かもしれないと思ったんです。とにかくもう落ち込みたくなかったし、うまくいかないとつい『辞めてしまえ』と思ってしまう自分のことも嫌でした。だからといって変な思想には頼りたくないし、自分を強く持ちたかったんです」。
どのような関わり方がいいだろうと打ち合わせを重ねた結果、今井さんが今一番解消したい課題が浮き彫りになりました。それは、個人面談の質を上げることです。
「これまでは全て僕が決めていて、スタッフや本店の店長である妻の声すら全く聞いてきませんでした。だから話を聞こうと思って個人面談を始めたのに、気づけば結局一方的に喋って終わってしまう。人の話が聞けるようになりたい。聞く力をつけて、やる気を出してもらって面談を終えたい。そうすれば現場の雰囲気が変わり、人も定着するだろうと思ったんです」。

そこでリムが提案したのは、ワダチラボのオリジナルプログラム「メンタリング」。
「メンタリング」とは、コーチング的な関わりを通して必要な情報提供やアドバイスを行うもの。対話をベースにその時々の課題へのアプローチを共に考えていくというものです。
封じ込めた笑顔を解禁し、LINEで絵文字を使うように
メンタリングで、今井さんにはある驚きがあったと言います。
それはリムが「凄い」「素晴らしい」という言葉を連発すること。
「最初はびっくりして受け止めることができませんでした。なんでそんなにポジティブな言葉を使うの?って(笑)。僕はこれまで、気を引き締めておかないと失敗すると思って、店では笑顔を封じ込めていたんですよ。だけど逆だったんですね。そこに気づいてからは職場で笑顔を見せたり、LINEに絵文字を使うようになりました(笑)。いい言葉を使えるようにもなったと思います。さらにコミュニケーションの技術を取り入れたり、リムさんが出す宿題なんかもやっていくうちに、個人面談後にすっきりした顔をして帰っていくスタッフも見られるようになりました」。
さらに思わぬ効果もあったとか。
「これまで相談できる人がいなかったので、話を聞いてもらことの必要性を感じています。一言でいうと精神安定剤ですね(笑)。聞いてもらうことですっきりしますし、再確認の場にもなるんです」。

苛立ちから「共に成長したい」へ
「本やyoutubeでも学ぶことはできますが、直接対面して、目の前の問題に向き合ってもらうことで身に入りやすいんだなと感じました。社長が落ち込むと決断が鈍るし、それによって会社全体が落ち込んでしまいます。逆に自分が乱れなければ会社は必ず成長できると信じています。だから決して安くはない金額を払ってでも、こういう機会を作るのは必要だと感じます。
現在、毎月約14 名の個人面談をしていますが、やっと少しずつ仕事の課題点を聞けるようになってきたし、僕自身も『なんだよ』って思うことがなくなりました。スタッフへの期待や焦りが完全に消えたわけではないけれど、一方的に成長を求めるのではなく一緒に成長したいという気持ちに変わったのは大きいです。『共に』という発想をもてるようになったことで、僕自身も少し楽になった気がします」。
メンタリングを通して、気持ちの面で大きく変化を感じているという今井さん。引き続きメンタリングで自身のコンディションを整えながら、聞く力を強化していきたいと話してくれました。

今回、取材を受けてくれたのは「いまいパン合同会社」の今井陽介さんです!

今井 陽介さん
いまいパン
オーナー
相談できる人がいない。社内に信用できる人がいない。スタッフの話を聞くことができない。
常に大きな決断を迫られる経営者だからこそ、このような悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するいまいパンは、弊社が実施するメンタリングプログラムに参加してくださりました。
その背景とメンタリングを通して感じられた効果について、いまいパンオーナーの今井陽介さんにお聞きしました。